マイナー作品レビュー関連のアレ
今回のレビューは某所の企画用に書いたのだけれど、アップするのを忘れて気がついたら期限を過ぎてしまいました…というわけで、せっかくなのでアップしてしまえということで、久々の更新です。ちょっと偉そうな文体なのは最近読んだ本の影響ということで。
- 出版社/メーカー: 13cm
- 発売日: 2003/12/26
- メディア: DVD
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この作品を単なる凌辱ゲームと捉えるか、哲学と捉えるか。その判断によって作品の価値は大きく変わってくる。確かに、売り出し方もいわゆる「エロ」をメインに押し出しているし、そこにそれ以外の要素を匂わせる要因なんて無い。CGのほとんどもそれである。だが、この作品には、間違いなく他の凌辱ゲームにはないものがある。そこをぜひとも感じ取って欲しい。
主人公は性的な快感を求めてヒロインに性を要求しているのではない。あくまでも日常の、「平凡な」日常の変化として、その代償のように凌辱行為を続けている。どうして、そんなにも主人公は普遍に疑問を感じるのか、その行為を続けることで本当に自分は満たされているのか。この作品は決して何かの答えを見つける物語ではないし、救いを求める物語ではないけれども、人生における疑問や憤りというのはひしひしと伝わってくる。もしかしたら、ライター流の新世界というものを、我々プレイヤーに提示しているのかもしれない。
本レビューにあたって、確認の意味もこめて再度プレイしてみたのだが、数年前にプレイしたとき以上に、その異質さ・特異さを再認識した。古い作品だが、演出や構成など、現在プレイしても十分楽しめると思う。壮絶な歌詞のOP「Abyss」や、切ないピアノのBGM曲など、音楽面も非常に優秀である。ただ、間違いなく万人受けするようなタイトルではないので、紹介しようかどうか迷ったのだが、企画の主旨にもあるよう、そういったことは気にしなくて良い、とのことなので遠慮なく紹介させてもらった。
エロゲー、という言葉がこれほどぴったりと当てはまる作品もなかなかないだろう。なるほど、これは良くできたピカレスクロマンである。
- 出版社/メーカー: Mixed up
- 発売日: 2006/09/22
- メディア: DVD-ROM
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どんなことにも、必ず初めの一歩があるけれど、恋愛っていうのは、やはり特別なものなのだ。楽しかったり、嬉しかったり、辛かったり、傷ついたり… あらゆる感情を綯い交ぜにして、誰もが経験していることでも、人それぞれ中身はまったく違う。始まりがあれば終わりがあるわけで、色々な失敗を繰り返しながら人間は成長していくんだ、というそんな初歩的なことを教えてくれる作品。
悩むことって、周りに支えてくれる人がいるからこそできる。自分を大切に思ってくれる誰かがいるからこそ、悩んで進むことができる。本作をプレイしていて羨ましいというか、憧れみたいなものを感じたのは、周りの人間が些細なところで主人公のことを支えている部分である。いつもは馬鹿をやっていても、肝心なところではきちんと相手のことを考えている。辛いときの仲間の励ましほどありがたいものって、なかなかない。
本作を評価する上で欠かせない要素っていうのは、やっぱり失恋なんだろうけど、失恋した主人公を取り巻く環境というところにスポットを当てると更に本作の良さがわかるはず。環境に甘えて、犠牲に犠牲を重ねていくような主人公に対して嫌悪感を持つ人もいると思うが、若い頃って、そんなわけのわからない犠牲や失敗なんて、誰だってやっている。大小や程度の問題はあるかもしれないが、そうした経験って後々必ず生きているはず。主人公の未来、というのは閉ざされた作品の中では推測することでしか存在し得ないが、きっと明るいものなのだろうと願う。
前向きになりたい人や、何か迷っている人には一歩踏み出す勇気が持てるようになるかもしれない。切なくも前向きなエロゲーとして、ぜひともおススメしたいと思う。
さて、今回紹介した2本はまったく方向性の異なる作品である。しかし、どちらもわたしの心の中には深く刻まれている作品で、決して色褪せないものだ。エロゲー業界というのは、市場規模としてはそこまで大きくないものかも知れないが、中身はものすごく多岐にわたっている。その中で自分に合う作品、プレイしてよかったと思える作品に出会えることはなかなか難しい。非常に稚拙であることはもちろん自覚しているが、このレビューが誰かの心に残るような作品を見つけるきっかけになれば嬉しい。